心穏やかに、これからを共に パートナーと分かち合う「得意」と「苦手」ワーク
二人の時間が増えた今、なぜ「得意」と「苦手」を知ることが大切なのでしょうか
お子様が独立され、パートナーと二人で過ごす時間が増えたという方もいらっしゃるかもしれません。これからの人生を共に歩む中で、お互いの存在をより身近に感じ、支え合いながら楽しく過ごしたいという願いは、とても自然なことだと思います。
一方で、長年一緒にいても、意外と知らないお互いの側面があるものです。日々の生活の中で、無意識のうちに相手に任せきりにしてしまっていることや、我慢して一人で抱え込んでいることがあるかもしれません。特に、これまでの役割分担が変わる時期には、こうした「当たり前」が少しずつ変化していくこともあります。
これからを心地よく二人で過ごすためには、お互いの「得意なこと」や「少し苦手だなと感じること」を改めて知り、認め合うことが、とても大切な第一歩になります。相手の得意なことを知れば、感謝の気持ちが生まれます。苦手なことを知れば、思いやりを持って接することができます。そして、それらを分かち合うことで、二人の間で自然な協力や支え合いが生まれるようになります。
ここでは、特別な準備は何もいらず、ご自宅で心穏やかに行える、パートナーとお互いの「得意」と「苦手」を分かち合うワークをご紹介します。
ワーク1:パートナーと「得意・苦手」を書き出してみましょう
まず最初に行うのは、お互いの「得意なこと」と「苦手なこと」を、肩の力を抜いて書き出してみるワークです。これは、自分自身を振り返り、そしてそれをパートナーと共有するための時間です。
目的: お互いの強みや弱みを改めて認識し、日常のさまざまな場面での見え方や感じ方の違いを知るきっかけとします。相手の苦手を否定せず、得意なことを尊重する視点を持つことを意識しましょう。
必要なもの: 紙とペン(お一人につき1枚ずつ)
具体的な手順:
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一人でじっくり考える時間を持つ(10〜15分程度):
- パートナーとは別の場所や時間で、一人で落ち着いて座ります。
- 紙を半分に折るか、縦に線を引き、左側に「得意なこと」、右側に「苦手なこと」と書きます。
- 日々の生活の中で「これは割とスムーズにできるな」「人から褒められることがあるな」と思うことを「得意なこと」の欄にいくつか書き出してみましょう。家事、趣味、段取りを組むこと、誰かの話を聞くこと、新しいことに挑戦すること、手先を使うこと、感情を表現すること、など、どんな小さなことでも構いません。
- 次に、「これは少し億劫だな」「どうも上手くいかないな」「つい後回しにしてしまうな」と思うことを「苦手なこと」の欄にいくつか書き出してみましょう。これも、料理、片付け、計画を立てること、人前で話すこと、早起き、感情を伝えること、急な変更への対応、など、具体的なことでなくても、感覚的なことでも大丈夫です。
- 思いつくままに、いくつか書いてみてください。完璧を目指す必要はありません。
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お互いのリストを交換して読む(5〜10分程度):
- 書き終わったら、パートナーと向き合って座ります。
- お互いの書いた紙を交換して、じっくりと読んでみましょう。声に出して読んでも良いですし、心の中で読んでも構いません。
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感じたことや気づきを伝え合う(10〜15分程度):
- リストを読み終えたら、お互いのリストについて感じたことや驚いたこと、知らなかったことなどを率直に伝え合いましょう。
- この時、相手の書いたことに対して、「え、これが得意なの?」「それは違うでしょう」「もっと頑張ればできるのに」のように、否定したり、評価したり、アドバイスしたりすることは控えましょう。
- 「へぇ、そうなんだ」「これは知らなかったな、意外だったよ」「そうだったんだね、大変だったね」のように、相手の気持ちや書いた内容をそのまま受け止めるような言葉を選ぶことを意識します。
- もし、相手の書いたことについてもっと知りたいことがあれば、「〇〇が得意って書いてあったけど、具体的にどんな時そう思うの?」「〇〇が苦手って書いてあったけど、何かきっかけがあったの?」のように、優しく質問してみましょう。
このワークで期待される効果: * お互いの意外な一面を知ることができ、新鮮な気持ちになります。 * 相手が日常で感じている困難や、当たり前にこなしている努力に気づくきっかけになります。 * お互いをより深く理解しようとする姿勢が生まれます。 * 「そうだったんだね」という共感の言葉が、会話を自然に増やします。
ワークを行う上でのヒント: * 最初からたくさん書こうと思わなくても大丈夫です。2〜3個でも良いので、気軽に始めてみましょう。 * 「得意」「苦手」は、あくまでその時の自分の感覚です。絶対的なものではありませんので、気楽に捉えてください。 * このワークの目的は、お互いを「知る」ことです。優しさを持って耳を傾けましょう。
ワーク2:二人で「支え合い・協力」のアイデアを考えましょう
ワーク1でお互いの「得意」と「苦手」を分かち合えたら、次はそれらを活かして、これからの二人の生活や関係性をより良くするための「支え合い」や「協力」について具体的に考えてみましょう。
目的: 共有したお互いの「得意」と「苦手」を元に、今後の二人の時間や日常生活において、どうすればお互いを心地よく支え合えるか、具体的な協力のアイデアを見つけます。
必要なもの: 紙とペン(無くても口頭での話し合いでも大丈夫です)
具体的な手順:
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お互いのリストを見ながら、協力の可能性を話し合う(15〜20分程度):
- ワーク1で書いたお互いの「得意・苦手」リストを並べて見ます。
- これからの二人の生活、例えば、食事の準備、掃除、片付け、買い物、庭の手入れ、旅行の計画、趣味の時間、友人との付き合い、健康管理など、さまざまな場面を思い浮かべながら、お互いの得意なことをどう活かせるか、苦手なことをどう補い合えるか、具体的なアイデアを出し合ってみましょう。
- 例えば:
- 夫「(苦手なことリストを見て)そうか、あなたは片付けが少し苦手なんだね。僕は割と物をしまうのが得意だから、一緒に片付ける時間を設けてみようか?」
- 妻「(得意なことリストを見て)あなたは計画を立てるのが得意なんだね!今度旅行に行くとき、行きたい場所や宿の候補を探してくれると嬉しいな。私は調べるのは苦手だけど、最終的にどこにするか決めるのは得意だから、一緒に相談して決めよう?」
- 夫「僕は早起きが苦手なんだけど、あなたは得意だよね。もし余裕がある時で良いんだけど、朝食の準備を手伝ってもらえたら助かるなぁ。」
- 妻「あなたは人の話を聞くのが得意って書いてあるね。私、たまに仕事で大変だったことを誰かに話したい時があるんだけど、聞いてもらえるとすごく心が楽になるの。」
- このように、お互いのリストを見ながら、「あなたの〇〇なところが、こんな時に役立ちそうだね」「私の〇〇なところは、△△なあなたにとってどうかな?」といった具体的な提案や質問を交わしてみてください。
- 「こうしてほしい」「こうするべき」という一方的な要求ではなく、「こうしたらお互いにもっと心地よく過ごせるかもしれないね」という視点で、二人で一緒にアイデアを探す気持ちで話し合いましょう。
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すぐに試せそうなアイデアをいくつか決めてみる(5〜10分程度):
- 話し合いの中から出てきたアイデアで、「これはすぐにでも試せそうだな」「これから意識してみようかな」と思うものをいくつかピックアップし、二人で確認し合います。
- 例えば、「来週から、週末の片付けは二人で一緒に行ってみる」「疲れた時は、遠慮なく『話を聞いてほしいな』と伝えてみる」「旅行の計画は、まず得意な方がたたき台を作る」など、小さな一歩で構いません。
- 全てを実行する必要はありませんし、合わなければまた別の方法を考えれば良いのです。二人で話し合って決めたというプロセス自体が、とても大切です。
このワークで期待される効果: * これからの二人の生活や時間において、お互いの存在がより心強く、頼りになるものだと感じられるようになります。 * 具体的な協力のアイデアが見つかることで、日々の小さなストレスが軽減される可能性があります。 * 「二人で力を合わせれば、色々なことができる」という前向きな気持ちが生まれます。 * 会話が、日々の出来事の報告だけでなく、未来に向けた建設的な内容にも広がります。
ワークを行う上でのヒント: * すぐに完璧な答えや解決策を見つけようと思わなくても大丈夫です。話し合うプロセスを楽しみましょう。 * 出てきたアイデアは、あくまで「試してみること」です。義務やノルマにせず、柔軟に取り入れてみてください。 * 相手の提案に対して、「それは無理だよ」「そんなことできるわけない」と否定的に返してしまうと、せっかくの話し合いが滞ってしまいます。「なるほどね、それも一つの方法だね」「具体的にはどうするのかな?」のように、まずは受け止める姿勢を大切にしましょう。
ワークを続けるためのヒントと大切なこと
これらのワークは、一度行えば全てが解決するという魔法ではありません。しかし、定期的にお互いの気持ちや状況を分かち合い、協力の方法を話し合う時間を持つことは、これからの二人の関係性をより豊かにしていくための大切な土台となります。
- 完璧を目指さない: 「得意・苦手」のリストも、協力のアイデアも、完璧である必要はありません。その時の素直な気持ちや思いつきで十分です。
- 優しさと思いやりを持って: ワーク中は、お互いを尊重し、優しさを持って接することを心がけてください。批判や否定はせず、「あなたを知りたい」「あなたにとって何が心地よいか一緒に考えたい」という気持ちで向き合いましょう。
- 無理強いしない: パートナーが乗り気でない時は、無理強いせず、また別の機会に声をかけてみてください。大切なのは、お互いが心穏やかに取り組めるタイミングを選ぶことです。
- 変化を受け入れる: 人の得意なことや苦手なことは、年齢や経験によって変化していくものです。一度話したからといって決めつけず、お互いの変化を柔軟に受け入れていく姿勢が大切です。
- 感謝の気持ちを伝える: ワークで見つけた相手の得意なことや、協力してくれたことに対して、「ありがとう」「助かるよ」と具体的に言葉で伝えることを忘れないでください。
まとめ:これからを共に、心地よく過ごすために
お子様の独立は、ご夫婦にとって新たなスタートの時期でもあります。これまでの子育て中心の生活から、改めてお互いと向き合う時間が増える中で、少し戸惑いを感じることもあるかもしれません。
今回ご紹介したワークは、お互いの「得意なこと」と「苦手なこと」を知り、それをこれからの二人の生活の中でどのように活かし、支え合っていけるかを話し合うためのものです。これは、単なる役割分担ではなく、お互いの存在を認め合い、尊重し合うための心温まる時間となるでしょう。
お互いの「得意」と「苦手」を分かち合うことで、これまで見えなかった相手の頑張りや、当たり前だと思っていたことへの感謝に気づくことができます。そして、二人で協力し合う具体的な方法を見つけることで、これからの日々がよりスムーズに、そして心地よいものになっていくはずです。
ぜひ、パートナーと二人で、心穏やかにこのワークに取り組んでみてください。そして、「これからを共に、心地よく過ごす」ための、お二人だけの支え合いの形を見つけていってください。きっと、二人の絆がさらに深まり、これからの人生がより豊かなものになるはずです。