パートナーの「価値観を形作った経験」を語り合うワーク
「関係性ワークショップ」にようこそ。
子供たちが独立し、ご夫婦で過ごされる時間が増えたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。これからの人生をパートナーと共に心地よく、そして楽しく過ごすために、改めてお互いを知り、関係性を深めていくことはとても大切です。
今回は、長年連れ添ったパートナーでも、意外と知らない「価値観の源泉」に触れることができるワークをご紹介します。お互いの人生経験を語り合い、理解を深めることで、きっとまた新しい会話が生まれ、二人の関係性がより豊かなものになるはずです。特別な準備は必要ありません。お茶でも飲みながら、穏やかな気持ちで試してみてください。
なぜ、パートナーの「経験」を知ることが大切なのでしょうか?
私たちは皆、これまでの人生で様々な出来事を経験し、多くの人との出会いを通じて、自分自身の考え方や大切にしていること(価値観)を形作ってきました。パートナーも同じです。
普段の何気ない会話だけでは、なかなかお互いの価値観が「どのようにして」「なぜ」形成されたのかまでを知る機会は少ないかもしれません。しかし、その背景にある経験や感情を知ることは、パートナーの言動の理由を理解することに繋がり、より深い共感や尊敬の念を抱くきっかけとなります。
子供が独立し、これからの二人の時間をどう過ごすか考え始めた今だからこそ、お互いの内面に改めて目を向け、知らなかった一面を発見する良い機会となるでしょう。
パートナーと試せるワーク:価値観の源泉を探る
ここでは、お互いの「価値観を形作った経験」を語り合うための簡単なワークを2つご紹介します。どちらか一方、あるいは両方試してみていただいても結構です。
ワーク1:「私の価値観を形作った出来事」シェアタイム
これは、人生の中で「自分の考え方や価値観が大きく変わった、あるいは今の自分の考え方に強く影響を与えている」と感じる出来事をパートナーに話してみるワークです。
- 目的: お互いの人生観や大切にしていることの根幹を知る。
- 必要なもの: 特にありませんが、もし話したいことが整理しにくければ、話したい出来事を簡単に書き出すための紙とペンを用意しても良いでしょう。
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手順:
- まずはどちらから話すか決めましょう。
- 話す側は、これまでの人生で「自分の考え方や価値観が大きく変わった、または強く形作られた」と感じる出来事を一つ(またはいくつか)心の中で思い浮かべます。それは大きなライフイベント(例:結婚、就職、病気、引っ越し)かもしれませんし、些細な日常の一コマや、人との出会いかもしれません。
- 思い浮かべた出来事について、パートナーに話します。
- どのような出来事だったのか?
- その時、どんな気持ちだったのか?
- その出来事から何を学んだのか、または何に気づいたのか?
- その経験が、今の自分の考え方や価値観にどのように繋がっているのか? といったことを、ご自身の言葉でゆっくりと語ってみましょう。
- 聞き手は、パートナーの話をただ静かに耳を傾けてください。途中で遮ったり、評価したり、批判したりせず、共感的な姿勢で聞くことを心がけましょう。話を聞きながら、パートナーの気持ちに寄り添ってみてください。話が終わった後に、「その時、〇〇(パートナーの名前)はどんな気持ちだったのかな、と考えて聞いていたよ」のように、感じたことを優しく伝えても良いでしょう。質問したい場合は、「なぜそうしたの?」よりも「その時、どんな気持ちだった?」のように、感情や経験に焦点を当てた質問が相手の心を開きやすくします。
- 一通り話し終えたら、お互いに感謝を伝え合い、今度は立場を交代してパートナーが話す側になります。
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期待される効果:
- パートナーの行動や考え方の背景にある理由が腑に落ち、より深く理解できるようになります。
- 今まで知らなかったパートナーの一面に触れ、新たな尊敬や親しみが生まれる可能性があります。
- 話す側も、自身の経験を振り返り、自分の価値観を再確認する機会になります。
- お互いの内面に寄り添う時間を持つことで、絆が深まります。
ワーク2:「影響を受けた人や言葉」を語る
私たちの価値観は、経験だけでなく、出会った人々や心に残った言葉によっても形作られます。このワークでは、ご自身の価値観に影響を与えた人物や言葉について語り合います。
- 目的: パートナーの人格形成や価値観に影響を与えた外部要因を知る。
- 必要なもの: 特になし。
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手順:
- お互いに、これまでの人生で「この人の考え方や生き方に影響を受けたな」と感じる人(家族、友人、先生、職場の上司・部下、有名人、歴史上の人物など、誰でも構いません)や、「この言葉が心に残っていて大切にしているな」という言葉(本の一節、歌の歌詞、誰かからの助言など)を一人または一つ思い浮かべます。
- それぞれが、その人物や言葉についてパートナーに話します。
- どのような人物/言葉か?
- なぜその人物/言葉に影響を受けたのか?
- 具体的にどのような影響があり、それが今の自分にどう繋がっているのか? などを話してみましょう。
- 聞き手は、興味を持って耳を傾け、相手の話をそのまま受け止めてください。話を聞いて感じたこと、例えば「〇〇さん(パートナーの名前)が、その言葉を大切にしているなんて知らなかったよ。素敵な言葉だね。」のように、素直な感想や共感を伝えてみましょう。
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期待される効果:
- パートナーの「ルーツ」や内面の支えとなっているものに触れることができます。
- お互いの意外な共通点が見つかったり、新たな話題のきっかけになったりします。
- 相手への理解が深まり、より多角的にパートナーを見られるようになります。
ワークを続けるためのヒント
- 完璧を目指さない: 最初から全てを語り尽くそうと思わないでください。話したいことが一つだけでも十分です。続けるうちに、自然と話せるようになることもあります。
- 心地よい場所と時間を選ぶ: 落ち着いて話せる、リラックスできる時間帯や場所を選びましょう。就寝前や週末の午前中など、ゆったりとした時間がおすすめです。
- 否定的な感情を受け止め合う: 話を聞く中で、過去のつらい経験などが語られることもあるかもしれません。その場合も、否定せず「そうだったんだね」「大変だったね」と寄り添い、感情を受け止める姿勢が大切です。
- 感謝の言葉を添える: 話してくれたパートナーに「話してくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。聞かせてもらったことへの感謝は、次の機会へ繋がります。
- 無理強いしない: 相手が話したがらない場合は、無理強いせず、その気持ちを尊重しましょう。「いつでも話したくなったら聞くよ」と伝えるだけでも、安心感に繋がります。
- 書き留めてみる: もし可能であれば、話した内容や心に残った言葉を簡単なメモとして残しておくと、後で見返したときに役立つことがあります。
まとめ:これからの二人のために
子供たちの独立は、ご夫婦にとって新たなスタートの時期でもあります。これまでの「子育て」という共通の大きな役割から解放され、改めて「夫婦」として、そして「一人の人間」としてお互いを見つめ直す時間が増えます。
今回ご紹介したワークは、お互いの「価値観を形作った経験」を知ることを通じて、パートナーの内面に寄り添い、理解を深めるための一つの方法です。こうした時間を持つことは、会話を増やすだけでなく、長年連れ添ったからこそ見落としがちな、パートナーの新たな一面や隠れた魅力の発見にも繋がります。
お互いを深く理解し合うことは、これから先の人生を共に、より穏やかに、そして楽しく過ごすための大切な土台となります。焦らず、お二人のペースで、ぜひこれらのワークを試してみてください。きっと、また新鮮な気持ちでパートナーと向き合えるはずです。
これからも「関係性ワークショップ」では、パートナーとの関係性を豊かにするための様々なワークやエクササイズをご紹介していきます。